2008-01-01から1年間の記事一覧

かあかあ。かあかあ。

翌日、自分の部屋に転がっていた『藪の中』をひっぱり出して読む。初見であったのだが、映画の印象が強いせいか、どうしても文字の上の横滑りしてしまう。初めて触れるときの純粋な感じ方を掴むことができず惜しい。 映画の原作が『藪の中』であることは分か…

かあかあ。かあかあ。

角川シネマ新宿で、黒澤明『羅生門』を初めて観た。原作は芥川龍之介『藪の中』。羅生門で始まり羅生門で終わる。 一つの死体を巡って四人が供述。しかし、一つの事実に対する四人の供述は全く異なる。それぞれの立場にはそれぞれの守るべきものがあり、各々…

わんわん。わんわん。

昼のコンビナートを電車から眺めて、思う。どうも少し見放されているように感じられるときは、細部が丁寧に描写された本に静かに向かうことが、バラバラになっていく自分をかき集める。エントロピー減少の法則、そんな法則の働きによって秩序立てられる。特…

ひでお爺さん

『新潮』を初めて手にとる。文芸誌はどんな人が買うのか。それぞれにどんなイメージがあるのか。あまり想像がつかなかったが、未発表の小林秀雄の講演が聞きたいという理由で買うことにした。 表紙には、舞城王太郎や東浩紀といった文字が踊っている。舞城の…

猫は感じやすい

僕の家の近くの猫が消えた。流れは変わる、か。

外濠

外濠を眺めることが多くなった。左に市ヶ谷、右に飯田橋。神楽坂を前に、富士見坂を背にして。 外濠の外側をなんとなく毎日歩いていたら、自然と内側に気持ちが向かっていった。日本の中心には森がある。昔、江戸城があったところ。 江戸時代ってどんなだろ…

目玉焼きって言いますものね

近頃は、高松でひっそりと暮らしていたのですが、その間に、ジョルジュ・バタイユ『眼球譚』(河出文庫)を読みました。こういった本を、20代の、とても品のよい、インテリなお姉さま方が、大真面目に読んで語り合ったりするなんて、なんてステキな世界だろう…

音楽との関わり、いろいろ

僕は、このいまの時代を生きていてよかったな、と強く感じることがある。でも、例えばビートルズがどんなに好きだからと言ってリアルタイムで彼らの作り出す音楽に次々触れながら、彼らの生きる60年代を共に生きたかったとか、そんな気持ちは案外湧かなかっ…

方舟

今、隣の国がどうなっているとか、環境問題がどうなっているのかとか、そういうことってなかなか実感がわかなかったりする。そのわりに、宇宙がどうなっているのかってこととかについては、関心を持っている人が案外多いように思える。 適切な表現とは言えな…

外套、芋粥、鼻

ゴーゴリ『外套・鼻』(岩波文庫)を読む。ヴィットリオ・デ・シーカ『自転車泥棒』においての「自転車」のように、厳しい寒さの中での一着の「外套」が、ひとの感情や当時の時代背景など全てを物語る。主人公アカーキイ・アカーキエヴィッチは、賑やかな夜…

もりのなか

死別、特殊、残虐、殉教、殲滅。『殯の森』(もがりのもり)を観た。昨年カンヌ映画祭で日本人女性監督が賞をとった作品。深い森の中をおじいさんと若い女性がさまよっていくの。「殯」という字を出したくて漢和辞典で調べてみると、音読みは「ヒン」と読む…