かあかあ。かあかあ。

翌日、自分の部屋に転がっていた『藪の中』をひっぱり出して読む。初見であったのだが、映画の印象が強いせいか、どうしても文字の上の横滑りしてしまう。初めて触れるときの純粋な感じ方を掴むことができず惜しい。
映画の原作が『藪の中』であることは分かるが、むしろ世界観はタイトルの通り羅生門なのだと思った。すると今度は、芥川がどんなつもりでこんな小説を書いたのか、わからなくなった。
旅法師が発する言葉に「如露亦如電(にょろやくにょでん)」というのがある。(人のいのちは)露のごとくはかなく、稲妻のごとく一瞬にして消え去る、という意味。注釈にはさらに、因縁によって生じたものは実体がなく空であることを例えた「金剛般若経」の仏語、とある。このことが「藪の中」の真相なのかもしれない。