ただいま

昨日の話。日本に帰るために飛行機に乗る。飛行時間が短いためトイレに行きたくなることもないだろうと思い、受付では窓側の席をお願いした。行きと違って帰りの機内ではとくにすることもないので、小さくなっていく地上や、雲の中の様子、雲の上での昼から夜への変化を眺めながら、何度かまどろんだりする。
到着時刻が近づくにつれて何となく頭の中に思い浮かぶのは、むこうで過ごした日々のこと。目が覚めてからは、もうこれから向かう場所にむこうで知り合った人々がいないことが、体でもってはっきりと理解された。むこうで起こった全てのことがこの時点で夢の中の出来事のように感じられて、不安になる。
また、日本を離れてむこうで暮らしている人のことを思う。想像の域を越えないけれど、その人が感じてきたことが少しだけ分かるような気がする。そんなことをいろいろと頭を巡らせているうちに自分の中で、日本を離れるつもりだった一年前の自分が蘇る。この一年間ずっと探してた気持ちの一部とじっくり向き合う。怖くて飛行機にも乗れないはずなのに、それでも自分が日本を離れることになったら会いに来てくれると言ってくれた人のことも思い出す。
あくまでお客であった以上、むこうに自分の居場所があるはずはないけれど、 これから向かう土地にも拠り所なんか存在しないのは知っている。それでも戻ろうとしている自分。今になって気付いてみれば、自分をむこうにまで向かわせた大きな力は確かに存在したのかもしれない。潜在的なものではあるけれど。そして今になって「むこう」という言葉によってあらゆるものが結びつけられていて、幾日かを過ごしていたことに気付く。
着陸態勢に入り機体が傾く。自分もこのまま窓から見える発光体の一つになってしまいたいという気持ちでいっぱいになった。祈るような強い気持ち。窓の外では光の粒が血液のように流れていた。


おまけ
僕がいない間に、石川の方で大きな地震があったそうですね。情報を得てもいまいち実感がわかないために心配になります。


今日の一曲 渚の国 / キセル