栃木旅行

先月初めの話。友人に誘われ、栃木県0泊1日の学生ツアーに参加する。テーマは建築。趣旨は大人数でレンタカーを借りて東京近郊にある有名な建造物を県ごとに片っ端から観に行こうというもので、僕が参加した栃木巡りは群馬、千葉に次ぐ建築見学ツアー第三弾。集まったメンバー7人のうち建築科でないのは自分ただ一人で、誘ってくれた友人以外は僕にとってはみんなはじめまして。期待半分、緊張半分で当日の朝を迎えたのだが、建築に関する知識が圧倒的に劣っているお客を誰もが温かく迎えてくれた。初対面の僕との会話からも自分が普段触れている分野以外のことを求め、吸収しようとする姿勢が強く感じとられたので、僕の方としてもその場に溶け込むのに時間がかからなかった。結局彼らと行動を共にした時間は、6:30am.に池袋に集合してから11.30pm.に赤羽で解散するまでの17時間。その間、僕の頭は常にフル回転だったので、さすがに帰りの電車内ではぐったりしていたが、一日中刺激的な人たちと未知なる建造物にたくさん触れることができたので、とても良い経験となった。
今回見学した中でも僕がとくにお勧めしたいのは、大谷資料館。建築に全く興味がない人にも是非一度行ってもらいたいと思う。資料館と言っても要は大谷石(家の塀などに使われ、よく小学生が傘でボロボロとほじくってしまう例のあれ)の採掘場跡なのだが、あなどるなかれ。名称からは想像できないような、幻想的で神秘的、あるいは宗教的とまで感じてしまう巨大な地下空間がそこには広がっていた。10℃程度に保たれた空間は、ピラミッドを髣髴させるようなスケール感でとにかく圧巻の一言。昨年夏に、富士の樹海付近にある「氷穴」というものを初めて体感し感動したものだが、正直そんな次元のものではなかった。日本にもこのような場所が存在することを僕は全く想像さえしてこなかったので、今回知ることが出来て本当に良かった。大谷資料館がある宇都宮市大谷町では、資料館だけでなく何てことない民家までにも驚かされてしまう。この辺り一帯では家の構造全てに大谷石が使われていて、埴輪のような特有のあたたかい雰囲気を町全体にかもし出している。「石」にもかかわらず脆くて加工しやすいという大谷石の、素材としてのポテンシャルの高さが町並み全体から窺えた。


大谷資料館
http://www.oya909.co.jp/


■その他に弾丸ツアーで行ったところ■
隈研吾が設計したものでは馬頭広重美術館、石の美術館那須歴史探訪館、ちょっ蔵広場、宝積寺駅前グリーンシェルターに訪れた。「隈研吾」という単語を知ったのもこの日が初めてだったのだが、とにかく日本人特有とも言える細やかで繊細な感覚を随所で感じることができた。こういうのは外国人にとてもウケそう。広重美術館の屋根の下を歩いていれば、竹林の中を歩いているような錯覚に陥るし、石の美術館内にある茶室では、本来どうしても重苦しい質感が付きまとってしまう「石」でさえも発泡スチロールのような質感になるように加工されていて、鮮やかなほど軽やかに見せてしまう。ただただ溜息。その他には、内藤廣設計のフォレスト益子と、なかがわ水遊園を見学した。


これだけ書けば、いかに内容が充実していたか理解してもらえたと思う。僕が一人旅で栃木に行くとしても、せいぜい大谷資料館に温泉を付けて一泊しよう、なんて具合だろう。本当ならそれだけでも十分お腹一杯になるんですけど。