発光体の見る夢


早朝五時半。実際のところは何時だか知らない。部屋の窓を開けて、身を乗り出し、煙草に火を点ける。夏の朝のこの時間は本当に気持ちがいい。余計なことは何もしないのがいい。そんなことを思ったのか思っていなかったのか、ただぼんやりと過ごす。
脇から猫現れる。ゆっくりと道を横切っていく。白いろの猫。お腹も随分大きい猫。ぶーにゃんだ。朝早くから御苦労さんだ。猫の時間の中で、一緒に居させてもらう。決して邪魔はしないので、という姿勢で。猫とぼくは目を合わせた訳ではないのだが、むこうもぼくの存在に気付いていることが感じられる。猫は気にせずにゆっくりと道を横切る。自分も煙草を吸っては煙を吐き出す。
道を渡りきった猫は、向かいのアパートの方へと進む。茂みに隠れてしまい、こちらからだと姿が捉えられなくなる。何やらゴソゴソとしているのは分かるのだけれど。やはりまた出てきて欲しい。祈るような気持ちで茂みの奥をじっと見つめる。すると、猫が現れたのと同じ場所から、今度は小さなおばあちゃん現れる。
「人だ。」
ぼくはその場からそっと離れ、静かに部屋の窓を閉めた。