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土曜の夕方に、自分の日記を更新することで「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」というものの存在を知る。おかげでその晩には夜行列車で名古屋へと向かうことが出来た。これも何かの縁ですか。それにしてもムーンライトながらってやつは何遍乗っても疲労で困憊。
日曜日に、高山からバスで白川郷まで足を運んでみる。白川郷世界遺産なのだとか。僕は着いてからその事実を知った。合掌造りが有名なのは知っていたけれど、いつのまにか指定されていたらしい。世界遺産の中で今も人が生活しているなんて何だか不思議。
白川郷は確かに素敵なところだ。しかし、そこら一体を占めているのは人人人だらけ。本来ひっそりとした静かな雰囲気をかもし出すであろう村には似合わない、異様な光景だった。皆がカメラを持ち歩き、立ち止まり、記念撮影を撮る。これが世界遺産に指定された、ということの実態。

人で賑わっている通りを避けて歩いていると、何やらクサいニオイのする小屋に辿り着く。小窓から中を覗いてみると、中にいたのは牛だった。早速反対側にある入口の方へ回り込んでみる。四頭いる牛はどれも黒い。いわゆる黒毛和牛。おそらくこれが飛騨牛。父牛(仮)は一人隅の方で昼寝。乳がある母牛は、座り込んでいる次男牛(仮)の身体を自らの舌でシャリシャリと毛繕いしていた。弟の隣で座り込んでいる長男牛(仮)は、先ほどから親子愛の様子をじっと眺める部外者をずっと睨み付けている。僕と黒毛和牛らの間を隔ているのは、柱に釘が打たれた板切れ一枚。心拍数は上がる。それでも一心不乱に我が子の毛をシャリシャリと舐め続ける母牛の献身的な姿に感動を覚えた僕は、しばらくその様子を眺めることにした。
しばらくすると、この奇妙な三角の均衡が崩れる。いきなり母牛が息子の毛を繕いながらウンコをし出したのだ。何の予兆もなく平然としだしたことにも驚いたが、とてつもない大きさをした、とんでもない量のウンコには圧倒された。ウンコに注意を引かれた僕は、母牛の身体へ視線を移す。今までは暗がりで良く見えなかったのだが、よく見ると母牛は形容しがたいくらいデカかった。今まで自分よりも大きい、動く生き物を間近で見たことがなかったことに初めて気付く。身体の大きさもそうだが溢れんばかり生命力の大きさを感じ、押し潰されそうになった。正直怖くなった。すると、それを察してか睨みつけていた兄牛(仮)が立ち上がり僕の方に一歩近付いて来た。思わず僕は逃げ出した。