2001年

 日頃、自分がどんなところで寝ているのかなど考えたりはしない。今晩もいつも通り普段と変わらない場所で横になったはずだが、昔よく聴いていた懐かしい音楽に身をあずけているうちに、 寝ていたところがいつの間にか全く別の様子になっていることに気付く。確かに覚えのある場所。自分が昔の自分の部屋のベッドの上で横たわっていることが、からだから確かに伝わる。
 昔と同じ気持ちを見つけてそれに歩み寄ろうとしていくことで、当時と同じ場所に辿り着けることがある。エンポリオが壁の隙間から音楽室に連れていくように。辿り着いた今の自分は昔の自分とは違うけれど、今晩もあの頃から変わらない場所で寝転がる。自分の記憶の中に身を潜めるという不思議な作業。そして今日と明日のすきまを越えると、あの真っ白い部屋に辿り着く。同じ夜は繰り返される。