対峙

風呂場から立ち去るとき、浴槽の中で仰向けになっている自分を想像する。
さっきまで、浴槽に蓋をし、水面とそれとの高さ20センチの間で呼吸をしていた滑稽な自分を想像するはずであったが、予想とは別の、妙に生々しいものを感じた。そして、これを眺めている自分もどこか己のものでない気がした。むしろ自己を意識したというべきか。
浴槽の中に自分を残したまま、蓋が閉まっていくのを見届ける。