小沢健次

タバコをまた吸い始めた。ぼくみたいな人は、吸っている方が人からそれっぽいと理解されやすい気がして。昔みたいにセブンスターがうまいとか、そんなことはどうでもいい。タバコなんて1mgで十分だ。煩わしいことなんかを、そんな風にして、安易に潰せさえすればそれでいい。ぼくはサングラスをかけて平気でなんていられないけれど、あの頃の人たちのように自分自身にだまされよう。
たまにだったら、十年前の頃のことを思い出して、自分を楽しませることもできたりもする。タバコを吸っていなかった頃は、夢の中にいるような幻の時間の中にいたのかもしれない。というか、そういう性格の別人格として捉えると面白くやっていけるかもしれない。今は五人目。主人格はたまにやって来る。

発光体の見る夢


早朝五時半。実際のところは何時だか知らない。部屋の窓を開けて、身を乗り出し、煙草に火を点ける。夏の朝のこの時間は本当に気持ちがいい。余計なことは何もしないのがいい。そんなことを思ったのか思っていなかったのか、ただぼんやりと過ごす。
脇から猫現れる。ゆっくりと道を横切っていく。白いろの猫。お腹も随分大きい猫。ぶーにゃんだ。朝早くから御苦労さんだ。猫の時間の中で、一緒に居させてもらう。決して邪魔はしないので、という姿勢で。猫とぼくは目を合わせた訳ではないのだが、むこうもぼくの存在に気付いていることが感じられる。猫は気にせずにゆっくりと道を横切る。自分も煙草を吸っては煙を吐き出す。
道を渡りきった猫は、向かいのアパートの方へと進む。茂みに隠れてしまい、こちらからだと姿が捉えられなくなる。何やらゴソゴソとしているのは分かるのだけれど。やはりまた出てきて欲しい。祈るような気持ちで茂みの奥をじっと見つめる。すると、猫が現れたのと同じ場所から、今度は小さなおばあちゃん現れる。
「人だ。」
ぼくはその場からそっと離れ、静かに部屋の窓を閉めた。

嘔吐マチック

特に用事がないときも、コンタクトレンズを付けて街に出かけるようになった。以前は裸眼で外に出る方が、どちらかと言えばぼんやりと景色が見えているくらいの方が、街を歩いていて気分が良かった。
あったかい頃、あんなにたくさんいた猫たち、今はどこに行ってしまったのだろう。

「いきましょう」

題名は、年末から今日まで暇があれば観ている宇多田ヒカル『Wild life』♯2traveling冒頭の個人的にツボなシーン。ライブDVDを観るようになったのはこれで初めてだけど、やはりお金をかけると、得られる喜びがあることを改めて実感。
今年の年末年始は、わりと落ち着いて過ごすことが出来て、外に出れるというだけで調子が良くなり、必要以上に晴れ着を着ては街を回遊しました。久々に街中で写真を撮ったりもしました。ポラロイドを撮ったりしていた昔の気持ちを思い出したりしながら。デジカメであったり、お下がりの紺色のダッフルコートであったり、革靴であったり。最近は自分以上に賢かったり重みがありそうなモノたちに色々なことを教えてもらっている気がします。
あけましておめとう。今年もみんなよろしくね。

2001年クリスタル

最寄りのブックオフで105円で買った『なんとなく、クリスタル』を読了。読了後の感覚は、『2001年宇宙の旅』を初めて体験したときの感覚に似ていた。僕がこのキューブリック作品を強く意識したときは、既に2001年を迎えてしまっていたし、当時ツタヤが出版していた映画雑誌の中では、テーマが古くさいとまで一般の人にレビューされていた。
『なんとなく、』もいまさら感が漂っていると思う。ここに書かれているテーマも、とっくに結果が明らかにされている。誰もが知っている。めまぐるしいほどのスピード感で一日がぶっ飛んでいく、一見選択肢が多く見えるようで、自分の手で掴める選択肢が狭まっている、そんな今となっては、「2001年」なんて幻。「クリスタル」も幻。それ故に上手に幻と手を取りあって戯れ合うことをここに示してくれる。世の中生き抜くのに大事なものはすでに在るかブックオフでだいたい105円。

もういくつ寝ると

久しぶりにMステを見た。紅白歌合戦にしても、こういった歌番組は僕はとても好きで、テレビでやっているとついつい見てしまう。年の瀬に似たような番組を何本も見ると、さすがに胸焼けしたような気持ちにはなるけれど。
番組を見て最初に気になったのがKis-My-Ft2っていう、ジャニーズの今の若い子たち。自分が知ってるここ最近までのジャニーズとは違って、アメリカやK-POPを意識してかバッキバッキにダンス踊る姿が印象的だった。“今っぽさ”とか“今の格好良さ”がとても表れてる気がした。一方で、現在J-POPやその周辺を引っ張っているのが、同じ事務所の嵐っていうのも番組を見てて面白かった。でも個人的には、今なお嵐とかが流行ってるのは少々古臭い気がしちゃうかな。
それから気になったのがレディ・ガガ。今更だけど。よくよく意識して見たのは徹子の部屋とスマップの番組以来これで三度目だけど、僕が想像してた海外のアーティスト像とはちょっと違ってて気になる。なんか変だぞ、この人って。それにまだ25歳なのに随分と格好いい。
こんな風にあたたかい部屋でテレビに向かって、ああだこうだ言いながら過ごせる年末が、とっても大切で好きです。

また、つまらぬものを

待望のジョジョリオン第一巻を買う。「社会性ゼロの人しかいない社会学部の一年生よ」という広瀬康穂の台詞が笑える。大学の中を見渡せば、社会性ゼロの人しかいないのは社会学部に限った話ではない。それは本人自身の問題よ、って真面目に思ったりして笑える。

前回の日記から二年ほど経過しての更新。この間にようやく自分も霧が晴れ明るみに曝されたことに気付く。さすがに。大学という場もあまり長くいるべきところではなかったようだ。無防備な姿が根本的に人から好かれることを祈りつつ、これからも飯を食らおうと思う。